困るのは、情報を盗まれることだけではない


あなたの仕事と、大切なつながりを守るために — 第 3 回

ある朝、いつもの仕事ができなくなったら

朝、お店を開けようとしたときのことです。

予約を確認しようとしたら、予約管理のサービスにログインできません。パソコンを再起動しても、スマートフォンから試しても状況は変わりません。

お客さんからの問い合わせには返事ができず、今日の予約が何件入っているのかも分かりません。昨日まで普通に使えていたはずなのに、何も進められなくなってしまいました。

「お客さんの情報が盗まれたのだろうか?」

もちろん、それも心配です。

けれど、この場面でまず困るのは、今日の仕事をどうやって続ければよいのか分からないことではないでしょうか。

予約を確認できない。お客さんに連絡できない。予定どおりにサービスを提供できない。

情報が外に漏れていなくても、仕事に必要なものが使えなくなれば、それだけで大きな問題になります。

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サイバー攻撃で起きることは、一つではない

サイバー攻撃という言葉を聞くと、顧客情報やクレジットカード情報などが盗まれる場面を思い浮かべる人が多いかもしれません。

情報が外に漏れることは、確かに深刻な問題です。お客さんや取引先に迷惑をかけるだけでなく、説明や問い合わせへの対応が必要になり、仕事への信頼にも影響します。

しかし、被害はそれだけではありません。

例えば、次のようなことも起こり得ます。

起きること 仕事への影響
情報が外に漏れる お客さんや取引先に説明や対応が必要になる
データが書き換えられる 金額、注文内容、連絡先などを正しく確認できなくなる
データが消される、使えなくなる 予約、会計、顧客情報などを確認できなくなる
システムやサービスが使えなくなる 注文、決済、連絡など、いつもの業務が止まる

つまり、情報を盗まれるだけでなく、情報を正しく使えなくなることや、仕事に必要な仕組みを動かせなくなることも、サイバー攻撃による被害になり得るのです。

「データがある」だけでは仕事にならない

もう少し具体的に考えてみましょう。

例えば、顧客情報や予約情報をパソコンで管理しているとします。

データが消えてしまえば、誰がいつ来店する予定だったのか分からなくなるかもしれません。データが書き換えられてしまえば、正しい連絡先や注文内容を判断できなくなる可能性があります。

また、データ自体は残っていても、保存している機器やサービスが使えなければ、必要なときに取り出せません。

紙の台帳なら棚に残っているかどうかを確認できます。しかし、パソコンやクラウドサービスの中にあるデータは、画面から見えなくなっただけなのか、壊れてしまったのか、誰かに書き換えられたのか、すぐには判断できないことがあります。

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一つの問題が、ほかの仕事にも広がっていく

困るのは、システムが使えなくなった場所だけとは限りません。

予約管理が止まれば、お客さんへの連絡に影響します。注文情報が確認できなければ、仕入れ先への発注にも影響するでしょう。決済ができなければ、商品やサービスを提供できても代金を受け取るところで困ってしまうかもしれません。

さらに、仕事が止まっている間にも、家賃や人件費、仕入れ代金などの支払いは続きます。対応に追われて、本来の仕事に使う時間も減ってしまいます。

こうした影響は、会社の規模だけで決まるものではありません。

大きな会社なら、別の部署や担当者が対応できることもあるでしょう。一方で、少人数の事業所や個人事業では、店主や担当者が一人で複数の役割を担っていることがあります。

そのため、普段使っている仕組みが一つ止まっただけでも、仕事全体に影響が及ぶことがあります。

そして、自分の仕事が止まれば、お客さんや取引先にも影響します。第 2 回で見たように、仕事は多くの人やサービスとのつながりの上に成り立っているからです。

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被害を受けた後にも、仕事は続いていく

サイバー攻撃による問題は、システムを元に戻せばすべて終わり、とは限りません。

何が起きたのかを確認する。お客さんや取引先に説明する。必要な情報を調べ直す。注文や予約を確認する。場合によっては、専門家に相談したり、関係する機関に連絡したりする必要もあります。

こうした対応には時間も労力もかかります。

また、一度失われた信頼を取り戻すには、さらに時間が必要になるかもしれません。

だからこそ、サイバーセキュリティは、情報を盗まれないようにすることだけを考えるものではありません。

大切な情報を守ること。仕事に必要な仕組みを守ること。そして、何かが起きても仕事を続けられるようにしておくこと。

これらは、すべてつながっています。

自分の仕事で「止まると困るもの」は何だろう?

ここで、一つだけ考えてみてください。

あなたの仕事で、明日から使えなくなったら特に困るものは何でしょうか。

  • お客さんの連絡先や予約情報
  • 注文や売上の記録
  • 決済や銀行のサービス
  • メールや電話などの連絡手段
  • 仕事で使うパソコンや保存データ

全部を挙げる必要はありません。まずは、一つだけ選んでみてください。

それが使えなくなったら、何ができなくなるでしょうか。代わりに使えるものはあるでしょうか。

すぐに答えが出なくても大丈夫です。考えてみること自体が、自分の仕事を守るための準備になります。

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サイバー攻撃は、情報を盗むだけのものではありません。普段の仕事を止めたり、正しく進められなくしたりすることもあります。

怖がるためではなく、何が大切なのかを知るために、まずは自分の仕事を見つめ直してみましょう。

次回は、そうした問題がどこからやってくるのかを考えます。自分のパソコンやお店だけを注意していれば十分なのか。思いがけないところにある入口について、一緒に見ていきましょう。

Series

身近な仕事から考えるサイバーセキュリティ - 仕事とつながりを守る
  1. その Wi-Fi、本当にお客さんだけのものですか ?
  2. あなたの仕事は、あなた一人ではできていない — “サプライチェーン”
  3. 困るのは、情報を盗まれることだけではない

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