あなたの仕事と、大切なつながりを守るために — 第 2 回
一つの商品が、お客さんに届くまで
小さなパン屋さんを想像してみてください。
朝早くからパンを焼き、お店に並べ、お客さんに買ってもらう。店主は材料を仕入れ、焼き上がりを確認し、接客をして、売上を管理します。
一見すると、店主とお客さんの間で完結する仕事のように見えるかもしれません。
でも、少し立ち止まって考えてみましょう。
パンを焼くには小麦粉やバターが必要です。それらを届けてくれる仕入れ先があります。オーブンを動かす電気があり、商品を販売するためのレジや決済サービスがあります。売上を記録する会計ソフトや、取引先と連絡を取るためのメールも使っているかもしれません。
店主が一人でお店を切り盛りしていても、その仕事は決して一人だけで成り立っているわけではありません。

私たちの仕事は、たくさんのつながりに支えられている
パン屋さんに限った話ではありません。
例えば、仕事の中には次のようなつながりがあります。
| 仕事の場面 | 支えている人やサービス |
|---|---|
| 商品や材料を用意する | 仕入れ先、製造業者、配送業者 |
| お客さんと連絡する | 電話、メール、メッセージサービス |
| 予約や注文を受ける | 予約サイト、注文システム |
| 代金を受け取る | 銀行、カード会社、決済サービス |
| 事務や経理をする | 会計ソフト、クラウドサービス |
| 仕事のデータを保管する | パソコン、ストレージ、バックアップサービス |
仕事の内容によって、必要なものは違います。すべてを利用している必要はありません。
ただ、多くの仕事には、自分の手元だけでは用意できないものや、自分だけでは維持できない仕組みがあります。
それらを提供してくれる人や会社、サービスがあるからこそ、私たちは自分の仕事に集中できます。
前回は、お客さん向けの Wi-Fi を例に、普段は見えにくいつながりについて考えました。今回はもう少し広い視点です。
私たちの仕事そのものが、たくさんのつながりの上に成り立っているのです。
そのつながりが、一つ止まったら?
こうした関係は、普段はとても便利です。
必要なものを届けてもらえる。離れた場所にいる人と連絡できる。複雑な計算や記録をサービスに任せられる。自分一人では難しいことも、さまざまな仕組みを利用することで実現できます。
では、そのうちの一つが使えなくなったらどうなるでしょうか。
例えば、こんなことが起きたとします。
- 仕入れ先の注文システムが使えず、必要な材料を発注できない。
- 決済サービスに障害が起きて、カードでの支払いを受け付けられない。
- 会計データを保存しているクラウドサービスにアクセスできず、必要な記録を確認できない。
- メールが使えなくなり、お客さんや取引先との連絡が滞る。
どれも、仕事の中で実際に困りそうなことではないでしょうか。
もちろん、これらはサイバー攻撃に限った話ではありません。機器の故障や通信障害、サービス側のトラブルなど、さまざまな理由で起こり得ます。
大切なのは、自分のところに問題が起きていなくても、仕事を支える何かが使えなくなれば、自分の仕事にも影響が出ることがあるという点です。
また、取引先や利用しているサービスがサイバー攻撃などの被害に遭った場合も、その影響が自分の仕事に及ぶことがあります。例えば、注文や連絡に使っているサービスが停止したり、取引に必要な情報の確認が難しくなったりするかもしれません。
すべてのつながりが、すぐに被害を広げるわけではありません。しかし、自分の仕事が何に支えられているかを知らなければ、何が起きたときに困るのかも分かりにくくなります。

こうしたつながりを「サプライチェーン」と呼びます
商品やサービスが、お客さんのもとに届くまでには、さまざまな人や会社が関わっています。
材料を用意する人、製品を作る人、運ぶ人、販売する人。それぞれが役割を果たし、次の人へと仕事をつないでいきます。
こうした一連のつながりは、「サプライチェーン」と呼ばれています。
少し難しい言葉に聞こえるかもしれませんが、特別なものではありません。私たちが普段から当たり前のように利用している、仕事を支える関係のことです。
そして、このつながりは大企業だけのものではありません。
個人で仕事をしている人にも、小さなお店にも、数人で運営している会社にも、それぞれのサプライチェーンがあります。
規模が小さいからといって、誰ともつながらずに仕事ができるわけではないのです。
まず、自分の仕事を支えているものを考えてみる
ここで、少しだけ自分の仕事を振り返ってみませんか。
仕事を始めてから、商品やサービスをお客さんに届け、代金を受け取るまでに、どんな人や会社、サービスが関わっているでしょうか。
例えば、次の 3 つを書き出してみるだけでも十分です。
- 仕事に欠かせない人や会社: 仕入れ先、取引先、外部の協力者など。
- 仕事に欠かせないサービス: メール、決済、予約、会計、クラウドなど。
- 使えなくなると困るもの: データ、機器、通信手段、記録など。
すぐに全部を洗い出す必要はありません。思いつくものからで構いません。
こうして書き出してみると、普段は意識していなかった仕事のつながりが見えてくるかもしれません。
自分の仕事を守るということは、自分のパソコンやお店だけを守ることではありません。仕事を支えてくれている人やサービスとの関係を大切にすることでもあります。
そして、つながりがあるということは、そのどこかで起きた問題が、自分にも影響する可能性があるということです。
次回は、サイバー攻撃で本当に困るのは何かを考えてみます。情報が盗まれることだけが、被害のすべてではありません。仕事を続けられなくなることについて、一緒に考えてみましょう。