その Wi-Fi、本当にお客さんだけのものですか ?


あなたの仕事と、大切なつながりを守るために — 第 1 回

「お客さんも Wi-Fi を使えるようにしてほしい」

そんな声をきっかけに、お店に Wi-Fi を用意したとします。

レジの近くにパスワードを書いた紙を置いておけば、お客さんはスマートフォンをインターネットにつなげられます。待ち時間に調べものをしたり、家族や友人に連絡したり。ちょっとしたサービスですが、喜んでもらえるかもしれません。

お客さんに便利に使ってもらいたい。その気持ちから始まった、ごく普通の工夫です。

ところが、ここで一つ考えてみてください。

その Wi-Fi は、お客さんのスマートフォンをインターネットにつなぐだけのものでしょうか?

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便利な Wi-Fi の、その先にあるもの

少し、小さなお店を想像してみましょう。

店内には、お客さん向けの Wi-Fi があります。同じ店では、キャッシュレス決済に使う端末や、事務作業をするパソコン、仕事のデータを保存する機器などもネットワークにつながっています。

これらがどのようにつながっているかは、普段あまり意識しないかもしれません。

しかし、Wi-Fi の設定によっては、お客さんが使うネットワークと、お店の仕事で使う機器のネットワークが、十分に分かれていないことがあります。

その場合、本来はお客さんがインターネットを使うための Wi-Fi が、店内の仕事用の機器にもつながる経路になってしまう可能性があります。

もちろん、こうした設定をした人が悪意を持っていたとは限りません。お客さんに便利に使ってもらいたかっただけかもしれませんし、設置したときにはそこまで考える必要があるとは知らなかったのかもしれません。

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問題は、Wi-Fi があること自体ではありません。

どこまでつながっているのか、誰がその先にアクセスできるのかを、知らないまま使い続けてしまうこと です。

見えない入口が、思わぬところに

このように、普段使っているネットワークが思わぬ入口になることは、現実にも起きています。

2014 年、Kaspersky Lab は「DarkHotel」と呼ばれる攻撃活動について公表しました。

この攻撃では、アジアの高級ホテルのネットワークが悪用され、宿泊客のうち特定の人物が狙われました。ホテルの Wi-Fi などからインターネットに接続しようとした宿泊客に、普段使っているソフトウェアの更新に見せかけた不正なプログラムを表示し、インストールさせようとしたのです。

宿泊客からすれば、ホテルに泊まり、いつものように Wi-Fi を使おうとしただけです。しかし、その接続の向こう側では、攻撃者が仕掛けた罠が待っていました。

これは、小さなお店が同じ規模や手口で狙われるという話ではありません。攻撃者の目的も、狙われた人々も異なります。

ただ、ここには一つ共通することがあります。

利用する人からは見えないネットワークの向こう側が、思いがけず攻撃の舞台になっていた ということです。

Wi-Fi が悪いわけではありません

ここまで読むと、Wi-Fi をお客さんに提供するのは危ないことなのか、と感じるかもしれません。

でも、そうではありません。

Wi-Fi は便利な道具です。お店や事務所の仕事を支え、お客さんや取引先とのやり取りを助けてくれます。大切なのは、便利さをあきらめることではなく、その道具がどこにつながっているかを知っておくことです。

まずは、次のようなことを考えてみてください。

  • お客さん向けの Wi-Fi と、仕事で使うネットワークは分かれていますか?
  • レジや決済端末、仕事用のパソコンは、どのネットワークにつながっていますか?
  • その設定を誰が管理しているか、分かりますか?

すぐに答えられなくても、心配する必要はありません。分からなければ、Wi-Fi を設置した業者や管理を任せている人に、「お客さん用の Wi-Fi は、仕事用の機器とは分かれていますか?」と聞いてみるだけでも、最初の一歩になります。

自分の仕事は、何とつながっているだろう?

今回の話は Wi-Fi から始まりました。

けれど、仕事を支えている「つながり」は Wi-Fi だけではありません。メール、予約、決済、会計、仕入れ、配送、クラウドサービス。普段は意識していなくても、私たちの仕事は多くの人やサービスに支えられています。

一つひとつは便利で、当たり前のように使っているものばかりです。

だからこそ、ときどき立ち止まって、「これは何につながっているのだろう?」と考えてみることが大切です。

怖がるためではありません。自分の仕事を、そして仕事を通じてつながっている人たちを守るためです。

次回は、あなたの仕事がどれほど多くの人やサービスに支えられているのかを、一緒に考えてみます。


出典: Kaspersky Lab, “The Darkhotel APT” (2014). DarkHotel に関する記述は、同社の調査報告に基づいています。 https://media.kasperskycontenthub.com/wp-content/uploads/sites/43/2018/03/08070903/darkhotel_kl_07.11.pdf

Series

身近な仕事から考えるサイバーセキュリティ - 仕事とつながりを守る
  1. その Wi-Fi、本当にお客さんだけのものですか ?
  2. あなたの仕事は、あなた一人ではできていない — “サプライチェーン”

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